勉三さんになりたい

午後出勤、通勤電車のなか書いています。

受験シーズンのせいか、あの男、キテレツ大百科の勉三さんのことがよく頭に浮かぶ。彼は何歳だったかな。彼は何浪だったかな。詳しいプロフィールはもう思い出せないけど、とても強い男だということは覚えている。

「ステータスを見れば明らかな弱者男性なのに、あの強さは何なんだ」

彼を思い出すときは、この違和感が伴う。


元来プライドの高いぼくは、「現状の自分」が「こう有りたい」という理想の自分とかけ離れていることを感じたとき、自分の殻に引きこもる癖がある。人との接触を断ち、なるべく醜態を晒さず(晒している気にならず)傷つかないようにする。

そんなぼくからすると、勉三さん、彼はとても強い男だ。彼は多浪だ。そして顔もあんな感じ。ぼくが彼のような立場だったときは人に会えなかった。外に出ず、すべての連絡を無視し、親には「息子は死んだ」と言わせた。(それによって友達が減り、同窓会に行けなくなり、それが後に尾を引き結婚式はとても寂しいものになった。)

しかし男勉三、彼は違う。彼はただでさえ冴えない風貌なのに多浪中ときた。明らかに弱者男性だ。原作の設定上は「気が弱く心配性」とあるが、それ反して、年上のお兄さんを気取り近所の子どもたちの引率として一緒に冒険に出たり、彼女だって作ったりする行動力。あれは何なんだろうか。「羞恥心がない」といえば言葉が悪いがそんなところだろう。そんな彼が羨ましくて仕方がない。

ぼくは今年で28。大学を出たあとに知り合った年下の友人や、職場の後輩たちにとってはもうオジサンだ。一緒に食事に行く際は奢らなきゃいけない(と思ってる。)。会計がふたりで1万円を越えようが「じゃあ…2000円でいいよ」なんてケチ臭いこと言わずに全額ちゃんと出すべき立場にある(と思ってる。)。

しかし現実は厳しく、この身は低賃金な上にお小遣い2万円倶楽部の会員ときた。日々の昼ごはん代にも四苦八苦している現状で飲み会代なんて負担できるはずもない。
「べつに自分の分は自分で出すからいいよ」と言われてもそういう問題じゃあない。小さなプライドに関わる問題だ。気にするもんは気にする。格好良く振る舞えるときしか年下には会いたくない。

ぼくは、出来杉くんにはもちろんのこと、勉三さんにもなりきれない。

勘違いしてはいけない。つまらない道徳心からではない。もっとつまらないプライドから。君を誘えてないのはそういうわけです。

最近は上司とばかりご飯を食べている。