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文弱日記

文学とサブカルとお役所生活

8月20日、今日の悲しみ

エッセイ

今日はじめて内定先の平均年収をネットで調べたら、750万を超えてた。公務員なので、500万そこらだろうと思っていただけに驚いた。


ぼくは大学受験で2浪している。だから高校時代のクラスメイトや、友人たちにいろいろと負い目を感じている。高校の頃は自分でいうのもなんだが、勉強が良く出来た。模試の成績では、県内ベスト10にも頻繁に入っていただけ秀才とあって、まわりの期待もひとしおだった。 

そんなこんなで東大志望というレールの上に乗せられ、そして2浪した。最終的に通うようになった大学は私文であり、あいつは大学受験に失敗した、とぼくは彼らにみなされた。 

「高校までのやつだったか」

「あのころは凄かったのにね、落ちぶれちゃって」

と裏ではみなにそう言われているような気がして、この6年間はとっても怖かった。同窓会にも顔を出さず、彼らとの交流を避けてきた。知人の不幸は蜜の味。きっと彼らは会合を開くたびに、ぼくのうわさ話を肴に酒を飲んでいちがいない。パラノイア気味のぼくには、そうとしか考えられなかった。

なので、就活でも、地元沖縄に帰ろうなんてことは一度も考えたことがなかった。


平均年収750万超


この数字を見た時、ぼくはようやく彼らと顔を合わせる資格が手に入った、と思った。風のうわさで聞く限りでは、彼らの中で一番いい就職先が地元地銀。平均年収は700万そこらだし、3年以内の離職率は3割を上回っている。ぼくに敵う勤め先ではない。

年収や学歴を基準にそういうことを考えてしまうところが、どこまでもぼく自身がイヤな人間であることを如実に表していた。そのことに気づいたとき、ぼくは心の底からぼくが嫌いになった。


まずは彼らに連絡を取る前に、彼らの名前で検索し、非申請で彼らのFacebookを覗いてみた。6年間、ぼくが居なかったのにも関わらず、ぼくの不在がまるで始めっからそうであったかのような感じで、彼らはかつてのグループでコメントを飛ばし合い、みんなで旅行し、よろしく盛り上がっていた。過去の日記やフォトアルバムを覗くと、そこはぼくの知らないここ6年の彼らの思い出で溢れていた。

ここにはぼくの帰る居場所はない。6年間のブランクはあまりにも長すぎた。

ぼくより不幸そうなやつを見つけようと、ぼくは旧友やかつてのクラスメイトの名前を覚えている限り、片っ端からFB検索してみた。フルネームで思い出せたのはたったの5人だけだった。

友達の友達の友達の~というかたちで、かつてのクラスメイトのアカウントを覗いて回ってたら、

「待てよ?Facebookって足跡機能とかあったっけ?」

と不安な気持ちに襲われた。もしも自分のアカウントでみなのアカウントを覗いて回っていたのがバレた、「これってあいつのアカウントじゃね?」「あいつはおかしくなった」「キモイ」「ストーカーだ」となり、アカウントがバレた挙句、いろいろと陰口を言われるに決っている。


ぼくはテンパリにテンパリ、結局、最終的にはアカウント自体を消すことにした。就活用で1年前に作ったアカウントが消えていく。あるかどうかもわからない足跡機能に怯えたぼくがぼくを消した。

年収750万がなんだ。決して高い額でもない。

ぼくはきっと、死ぬまで彼らに会わない。