ノルウェイの森

 父は村上春樹が好かないと言った。読書家だから、話題の小説は市立図書館で借りて一通り目を通す方だった。しかし如何せん詩心というものを持ちあわせていない。一番好きな作家がシドニー・シェルダンとかいう人間だ。村上春樹受け入れられないのも無理はない話だった。

 

兄はその逆で村上春樹が好きだった。芸術家肌というかミーハーな人間だったから、村上春樹との相性は良くないはずがない。新刊が出る度に買って本棚にこれみよがしに飾ってた。そんな兄に村上春樹の真髄は理解できるはずもない、とぼくは思ってた。

 

そういうぼくはと言うと、村上春樹を読んだことすらなかった。それよりもラスコリニコフの孤独やハンス少年の倦怠感の方に心惹かれていた。それこそ本物の文学だとぼくは思っていた。

 

そういうわけで、読まずもの嫌いしていた村上春樹作品。「やれやれ、ぼくは射精した」ぐらいのネタ程度でしか知らなかった作品を、知人に薦められたのをきっかけとして最近いっきに読み始めている。

まだ途中だけど、結論から言ってすっごい面白い。

 

もっと早くに読むべきだったと後悔してる。