美術室で教師と語り合う8時限目。生徒はぼくひとり。
人間失格、罪と罰、どくとるマンボウ、父と子、トニオ・クレーゲル。
側に積んだたくさんの好きな本。居残りで描いた汚い絵。そのモチーフ。
夕焼けの道を駅まで歩く。すれ違う量産型の大学生。
涼しい秋風と哀愁を誘う虫の声。
サンセットの向こうに消えてくふたり。
つり革に捕まる電車の中の声。
目の前に腰掛ける後輩。
声をかけるべきか否か。
その疲れたリーマンはため息し、ぼくもため息。
「大変だよね。つらいよね。」
後輩の足元を見る。程よく草臥れた革の鞄。
となりの女性と目が合う。
彼女は本を読んでいた。