夏の花

 歩いては立ち止まり、歩いてはまた、立ち止まる。背中を丸め老人のように歩いたかと思うと、若い男のように尖ってあるく。それから探偵になり、どこまでも立ち並ぶ墓標を一つ一つ、何かを探しているかのように、彼女はのぞき歩く。そのすぐ後ろを、ぼくは歩調を合わせついていく。杉の梢が陽を遮り、細い砂利道の上には木漏れ日が斑を描いている。

これが彼女の日課、いつもの”ひとり遊び”だ。こうして変わった子を演じては、周りを振り回す。彼女に出会ってから2年目のぼくは、もうそれに慣れっこだった。

 
 木々が影を曳いたあたりからカラスが舞い上がると、彼女はとたんに哲学者に変身している。ぼくが口を開いても「うん」とか「えぇ」とか、いい加減にしか応えてくれない。なにしろ周りでは死者たちが風のそよぎにまぎれ囁いているから、とでも彼女は言うのだろう。ぼくはまた黙って、彼女の遊びに付き合うことにした。

風は涼しいけれども、汗が頬を滴り落ちるほどに気温は高い。空には雲ひとつなく、見事に沖縄的な一日だった。


 その日はゴールデンウィークの日曜日、ぼくの所属していた文芸部の合宿初日だった。華の17歳、高校2年生のゴールデンウィークの半日が、こうわけもわからない霊園歩きに費やされた。いや、それだけではない。思えば、高校二年間、多くの貴重な時間が

 

 

(恥ずかしくて続きが書けない)