上司と花見

上司とサシで花見をしていた。

「こんなオタクの部下とふたりで飲んで何が楽しいんだ」
と思った3年だった。

彼はぼくが入庁してからというもの3年間ずっと直属の上司だった。(だった、というのもぼくは4月から異動で別の部署に行く。)

上司には最低でも週一でよく飲みに連れて行ってもらった。
はじめは「嫌だな帰りたいな」の一心だったが、付き合いが長くなるに連れ、「本当におれなんかで申し訳ない」という思いが強くなってきた。
「男二人で飲んで何が楽しいんだ(おれは奢られる方だからいいけど)」

上司、と書いたが彼は全くと言っていいほど上司らしくない。歳は今年で50になるオジサンだが、飲み会の話題もワンピースの話だったり、昨今のアイドル事情だったり、そこら辺のオタクと話しているような内容ばかりだ。

今日も上司とダイの大冒険の話をしながら花見をしていた。
「クロコダインっていたじゃないですか、あれってドラクエ本編には出てきてないですよね?」
「ググれば?」
なんて話した。

途中雨が降ってきたりしたので、屋根付きのベンチまで避難したり、コンビニに追加のお酒を買いに行ったりしながら5時間過ごす。

「おれも結婚してたら、坪内くんみたいな子供がいたのかもな」

チラリと聞いたその言葉に、思わず涙ぐんでしまった。



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