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文弱日記

文学とサブカルとお役所生活

東京サブカルデート その3

‘インスタントセックス`

なる単語を最近耳にした。何も3分間で終わる早漏男との性交を表す言葉ではない。

『ご飯を食べる』『寝る』といった行為と同様に、「安易・即座」な感覚でおこなわれている性行為


を意味するらしい。

(´ρ`)?

こんな言葉が誕生するほど、最近の若者の間では風紀が乱れているそうな。

 ぼくのような硬派で、明治時代の乙女にも負けるとも劣らない強い貞操観念を持った健全な青年には、全くと言っていいほど関係のない話しではあるが、ここ最近の若者の風紀の乱れを憂う今日このごろ。決して羨ましいとか、そう言う感情から来る妬みからではない(`・ω・´;)


 そんな自分とは対照的に、男性経験は多いが、お付き合いしたことは一度もないという彼女は、まさにインスタントセックスの常習者らしかった。
彼女の名誉のために書くが、何も淫乱女だというわけではない。
そういう彼女の一面は、彼女のこれまでの生い立ちが少なからず関係しているように思えた。

処女信仰を持っていないぼくでも、彼女のその過去は多少嫌だとは思ったがそれもまた彼女らしい一面であり、そんな危なっかしいところも含めて惚れていた。


 そんな彼女の初彼氏たるために、また他の男との差別化を図るために、ぼくは一つのルールを作った。


“クリスマスまでは彼女としない”と


「1週間以上同棲もしたのにやってないのかよ?」

などと、厳しいご指摘を受けることは承知の上。

「男のくせに、手を出さなかったのかよ!このいくじなし!」

となじられることも覚悟の上の決断だった。

このまま交わってしまえば、きっと彼女の中でぼくは、以前の男たちと同じような扱いになってしまうのかもしれない。

‘この関係が壊れてしまうかもしれない`

という危惧がぼくの中にあったからだ。

こう書けば何ともカッコイイが、まぁ、根底にはセックスに恋焦がれている童貞が故の、セックスに対する神聖視、恐怖感などがあったことは否定しない。


同棲してから一週間が過ぎたあたりのある日、ぼくが夜家に帰ってくるなり彼女から話があった。

『今日、新しい新居がついに決まりました!』

嬉しそうに彼女は言う。

「それはそれは、おめでとう( ´ ▽ ` )ノそれにしても、1週間で不動産契約なんて出来るもんなんですね。取り敢えず、今日は新居決定祝いと称して飲みますか!」

『うん、じゃんじゃん飲んじゃいましょう!でも、不動産契約を結んだわけではないんだ。』

「……どういうこと?」

『実は、オフ会で知り合った写真家さんの家に転がり込むことになったの』


(´▲`)?


『その写真家さんってのが、30を超えたおじさんで、超変態さんなのよwwwだから、少し不安だけど楽しみでもある///////// ”調教してね”って言っちゃったしw』


(´▲`)?


『嫉妬しちゃった?wwwwその家はここから少し遠いけど来れない距離じゃないから、ここにもちゃんと毎週の如く遊びに来ますって!』


彼女とぼくとの間にある大きな溝を認めたのは、確かその時だった。

ぼくと彼女は住んでいる世界は、違っていた。

 

*******************************

 

アフター5の新宿駅は、帰宅するサラリーマンやこれから遊ぶ若者、怖い人たちなど様々な人種でごった返しており、まさに現代の魔宮にふさわしい様相を呈していた。
そんな新宿駅を抜け、iphoneの地図アプリを頼りに予約したお店へと向かう。

途中、またいつもの如く迷子になってしまい、歌舞伎町や風俗街あたりもちらほら歩いた。予約時間を少し過ぎたころに、お目当ての店に着く。

 

 そのお店は、完全個室でDVDが観れる懐石料理屋という、何ともヘンテコな店だった。

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しかしそれゆえに、歳に似合わず懐石料理が好きな彼女の要望と、さいあく会話が全く盛り上がらなかったときようの保険としてDVD鑑賞設備が整っている、という双方の要望に答えた完璧な店でもあった。店名は確か「百舌」といった。

 

食事が始まるとそのような危惧した事態に陥ることは無かった。お酒が入ったためか、会話が軽やかに進んだ。

彼女の話題は、その華麗な男性遍歴であり、その小さい体のどこに? と思わせるほどのなかなかきわどい話のオンパレードだった。


『こんな話聞いたら、男の人は引いちゃうでしょ~』


彼女が恥ずかしそうに言う。


「ぼくNTR属性あるから、むしろ大好物ですよ。どんどん投下しちゃって、どうぞ」


酔った自分が馬鹿面で要求する。正直すっごい引いてた。それでも海綿体は正直だった。NTR属性ありというのも強ちウソではない。
そう求めたら、求めた分だけ壮絶なセックスの話が出てくるのが彼女の凄いとこ。
体験相手の話が両手では収まりきらなくなった辺りから、酔いが急に醒め、ぼくは聞くのを辞めた。


ぼくからの話題は、高校時代の部活動の話だったり、大学での日常だったりで、まぁ、たわいもない話だからここでは割愛することにする。
そんな身の上話のに加え、どうでもいい下ネタ・ホモネタの話や、互いが好きなものに対する批評合戦など、縦横無尽に色々と話した。

そうこう話しているうちに、時間が過ぎ、懐石料理のコースがすべて終了した。せっかく持って来たのだから、と残りの時間DVDを見た。


 それは田園に死すという映画だった。

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原作者寺山修司の半生を描いた邦画の名作映画で、『アーティストを志す人間なら必ず一度は見ろ』と言うほどの白物であり、表現活動にあこがれる、ネクラ(死語)な人を集める街灯のようなものだ。

白塗りの少年、奇妙なサーカスとその前衛的な演出もさることながら、
「実際に体験していなかったことも思い出のうち」
という、そのテーマがよく哲学や文学の議論の的となる。

彼女の言葉を借りれば、

「思い出とは、単なる事実の記録ではなく、事実の主観的解釈であり、後々から手直しや修正ができる可変的なものである。」ということらしい。


ヽ(´ρ`)ノ?


 アルコールの回った自分の頭ではあまり理解することができなかったが、たぶんこのようなことを言っていた。
高校中退だと思って少し侮っているところがあったが、彼女のその批評は借り物のそれではなく、しっかりとした知識・教養に裏打ちされた言葉のようにぼくには聞こえた。饒舌に語らる彼女を見て、ぼくはとっても満足した。実は、彼女がこの映画が好きなことをぼくは知っていたのだ。

 

 その前の週、ぼくは偶然(といっても彼女の名前を検索したからであるが)ネットで、とある地域雑誌のストリートスナップの表紙を飾った彼女の記事を見つけた。彼女はやはり奇抜な格好をしていた。そこに載ったインタビュー記事の内容から、彼女が「田園に死す」好きであることを掴んでいたのだ。
気持ち悪い話だと自分でも思う。が、シュトゥルム・ウント・ドラングの中では、ぼくは全くと言っていいほどそういう自分を客観視することができていなかった。

映画の序盤当たりは、互いに映画の構成や演出、それに込められた意図などについて、このように真面目に話していたが、映画が進むにつれアルコールも回ってきて、中盤あたりからはそんな態度はどこへやら、

ヽ(´ρ`)ノ ヽ(´π丶)丿 な状態で二人楽しむ。

田園に死すを見終わると、今度は彼女の番だ。
彼女が持ってきたのは『シュヴァンクマイエル』というチェコの監督が撮ったアングラ映画だった。食欲と性欲の汚いところばかりをガラポンして、スクリーンいっぱいにその汚物をぶちまけるスタイルで有名な監督らしく、その映画も決してデートで見るような作品じゃなかった。
彼女のほうが一枚も二枚も上手だった。どれだけ食欲が醜いものか、どれだけ性欲が醜いものか、まるでその変態監督を口寄せしたかのように嬉々として語る彼女もまたドが付くほどの変態だった。

 

 映画が終わり閉店時間をまわったころ、まだまだ飲み足りないということで、二人おぼつかない足取りで深夜の新宿をうろうろした。
眠らない街 というその称号にふさわしく、夜が更ければ更けるほど、街は活気を呈していた。客引きやスカウト、怪しげな着ぐるみオフ会の集団などの妨害を受けながらも、それを楽しみつつ、夜を歩いた。


ぴかぴかと光るネオン、桃色闘気をまとった猥雑な看板、遠くから聞こえるサイレン音、どれもこれもが愉快で、素晴らしく感じられた。


 その中から、一軒のジャズバーに入った。
新宿のジャズバーに行ってみたいと言う、彼女の前々からの願いに応えるためだ。
先ほどの懐石料理店での飲みの延長として、また馬鹿馬鹿しい話でもしながらお酒でも飲めたら、などと思って、入店したものの、店内は小粋で落ち着いたジャズピアノの生演奏が流れる、まさに‘ジャズバー`と呼ぶにふさわしいほどの大人の雰囲気で満ちており、二人は明らかに場違いだった。

カクテル片手に、互いに出来るだけ背伸びをした会話をした。

人生がどうだとか、哲学がどうだとか、恋愛がどうだとか、完全に雰囲気に飲まれた会話で、今思い出すだけでも恥ずかしい。
そんな中で彼女の話してくれた、“過去”の話がとても心に残った。

母親と離婚した実の父親を「前の人」と呼び、小学校からいじめられないように道化を演じ続け、母親の再婚と出産により、家庭内で孤立してしまい・・・・・

昼聞いた話よりもさらに深くて暗い話だ。そんな話を笑顔で話していたのは彼女なりの強がりだったのかもしれない。


落ち着いたピアノが流れる薄明りのジャズバーのなか。かわいい変態女のそんな一面を見せられたら落ちないわけがない。
「ぼく、惚れているなぁ」と認めたのはその時だった。


 二時間程飲んだあたりで店を出る。時間は牛の刻を回っており、終電はとっくに終わっている。
二人あてもなく夜を歩いた。

この時間帯の新宿は先ほどまでの活気が嘘のように、ネオンは影を潜め、街頭に立っている人たちの姿もまばらになっていた。

『終電もう終わっちゃっていたね…これからどうしようか?』

アルコールのせいか赤く高揚した顔で彼女が聞く。

「これからまた開いている居酒屋で飲み直しますか?」

『明日は午後からバイトがあるから、これ以上は無理ぃ~』

彼女にしては何とも軽薄な口調で返答する。

「じゃあ、どうしますか?」

『君のお家に行きたいな//////』

「えっ・・・・・!?」

『いや><、そういう意味じゃなくって、ホテルだと高いし、それに・・・・、君の家見て見たい』

うつむき加減んで彼女が言う。

「家・・・ですかぁ・・・・この前、連れ込まれてやられたばかりでよくそんなこと言えますねw」

『だから、そこには触れるなぁ~』


千鳥足の彼女の拳が空を切る。さすがに前回で学習していたため、今回は上手くかわすことができたが、バランスを崩して転ぶ。彼女の手を借りてなんとか立ち上がったその瞬間……

     ・
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新宿駅前でタクシーを拾い帰路につく。
一日中歩き回って疲れたからか、さっきのこともあって気恥ずかしかったから、車内を終始沈黙が支配した。
たまに口を開いては、

「まだ起きている?」

『起きてますよ』

と互いに静かな確認を取り合うだけ。

まるで深海のように静まり返った街を、京王線沿いにタクシーはすいすいと進んだ。

 

 高幡にある自宅に着くころは、メーターは1万を回っていた。深夜料金は侮れない(´・ω・`)
1万円を財布からかき集めて、なんとか払いタクシーを出る。

『さすがに、おごりは悪いですよ! 5千円は払います』
と彼女が言って来た。

「そちらは東海新幹線使って往復1万以上かけてこっちに来ているんだから、これくらいは」

『でも、、やっぱり悪いですよ・・・・』

「じゃあ、体で払ってもらいませんか?その5千円。」

『・・・・・はい・・・』
数秒の間をおいて彼女が恥ずかしそうに答える。

「・・・・・・・・・・」
予想外の返答に訳がわからなくなり、酔いが一気に醒め、ぼくは言葉に詰まった。

「なんてね、ただ言ってみたかっただけですよw」

『馬鹿!、無駄にゾクゾクしたじゃないか><』
彼女がポンとぼくの背中を叩いた。


酒の力を借りてしても女を口説けない。それが、童貞クオリティー(´-ω-`)

家へ招き入れ、溜め込んだビジネスホテルのアメニティグッズを初の女性来客者に与え、互いに軽く就寝の準備を取ってから、同じ布団に入る。
調子づいたぼくが吟詠した。

金珠代 縮まば縮め 拡がらば 忍るモノの 目覚めもぞする


それを聞いてこちらの意向を汲んだ彼女が返歌した。
残念ながらその内容は覚えてないヽ(´ρ`)ノ 古今和歌集に元ネタがある、下ネタ変歌だったことを彼女が解説していたことは覚えてる。


二人で作り出した文学的下ネタの空間に互いに惚れ惚れして、大人のエロティックなムードはどこへやら、互いになかなか眠らず、まるで修学旅行の夜のように、寝そべりながら、延々と暗闇の中話した。

途中、ぼくの高校の時の文芸部での活動が話題に上がり、パソコンに入った自作の過去の作品を色々と漁られては辛辣な指摘をつけられた。


文学少女曰く、‘感情描写が少なくて、無機質すぎる。アメリカのSF小説みたい`とのこと。


言い訳をしたかったが、そろそろ違うムードに移行したい手前、議論を吹っかけることはせず、ただただ甘受した。

続いては私の番、と言わんばかりに彼女がiphoneをパソコンに繋ぎ、自作の写真作品を披露し始めた。
そんなこんなを繰り返し、一向に期待していた‘大人のムード(´ー`* )))) `にならぬまま子供みたいにはしゃぎながら5時をむかえた。うっすらと明るくなっていく外の様子に焦って、ふたり就寝した。

しかしぼくは、女性が隣で寝ていると思うと、結局一睡もできず。彼女はいびきをかくほどの爆睡だった。どんな神経していることやら(´-ω-`)

 

 翌朝、眠たげな彼女を起こして、軽く朝食をこしらえ食べた後、彼女を駅まで送るために一緒に家を出た。少し前に大雨が降ったらしく、辺りは少し朝もやが立ち込めており、太陽はまだ雲に隠れている。
駅への道すがら、目をこすりながら、まだうとうとしている彼女に話しかける。

「どうしても、気になっていることがあるんで、聞いてもいいですか?」

『え、、何?』

薄い朝もやの中、今にも眠りそうな彼女が答える。

「昨夜、こっちがもしもあのまま押していたら、やれましたかね?」

いつになく真剣なトーンでぼくが聞いた。

『∵ゞ(≧ε≦o)ぶっ 朝っぱらから、朝から、、何を聞いているんですか[m:75]///////』

「もしもの、もしもの話ですよ」

『・・・やれていた、と思いますよ・・・><』

「おしいことしたかなぁ。」

『非常におしかったですよwwwはい、この話はここまで』

「確かに、朝話す話ではないですしねw」

真面目に聞いたこちらにも、ふつふつと恥ずかしさが湧きあがってきていたので。無難な感じで幕切れが図られた。


 住宅街を抜けて、公園を通り、浅川の土手についたころには彼女もだいぶ目が覚めているようだった。登校中の小学生、散歩中のご老人、通勤中のサラリーマン、朝のこの道は結構人通りが多い。
太陽はまだ雲から出て来ない。

『それにしても私たちってほんと何なんでしょうね、まだこう2回しか会ってないのに、なんだかとても近い感じがする』

会話が一段落ついたところで、彼女が今回のデート(?)総括をつけるように言った。

「もうひとつ気になってたことがありました」
ぼくが思いを切り出した。

「今回のこれって、もしかして“デート”でしたか?」

『え・・・っ』

「いや、、無料観光案内ですよね。何か舞い上がってしまいすみません。いやむしろ有料ということにして昨日の食費や宿泊費をこの場で清算していただいてもよろしいのですが」

恥ずかしさのあまり、冗談らしく言った。

『……デート、かな?』

「え、、、」

『だって、そういうことにしとかないとお金、取っちゃうんでしょ?w』

「あ、う~ん」

『うといなぁ、君は。わからないかなw』

恥ずかしそうに彼女が答え、ぼくの顔を覗き込む。ぼくは彼女が除きこんでいる間は、口を曲げて何もわかっていないようなバカ面を作ることに終始務めた。


 浅川に架かるふれあい橋を渡りながら遠くの空を見る。まだ太陽は顔を出していないどころか、一雨降りそうな感じさえした。
薄着の小学生たちが元気そうにわきを走り抜ける。
明け方の大雨のためか、浅川もはやその名を成してない。いつになく轟々と流れる浅川を二人眺めた。彼女は東京にもこんな風景があることに驚きの表情だった。

橋を真ん中まで渡ったところで、彼女はいてもたってもいられなくなったからか、手提げカバンからあの不釣り合いなほど大きいカメラを取り出した。その手提げかばんを橋の上のベンチに置くとパシャパシャと風景の撮影を始めた。

「天気が良ければ富士山も見えるんですけど。さすがに今日は無理でしょうね」

残念そうにぼくが言う。

『静岡県民ですから、富士山なんて見飽きてますよw それに~~』

カメラを振り回しながら、風景写真が何たるかを小難しい横文字を交えて彼女は講釈を垂れ始めた。ぼくは適当な相を打ちながら、橋の上のベンチに腰掛ける。
橋の上から浅川のみなもをのぞきながら、カメラを片手に彼女が言う。

『私のこと、君はどう思ったのかな』

「えっ・・・、どういう意味?」

『変な女だと思ったでしょ、ビッチだし、悪趣味だし、背低いし・・・』

彼女の表情は一眼レフで隠れていてよく見えない。だが、その横顔には昨夜のような厭世感の影は差し込んでいなかった。

「確かに、その通りですね(´▽’)wwwでもそういうところが個性的で、なんて言うか…好きですよ。」

空気を読んでか読まずか、場違いとも思えるから元気でぼくが答えた。もう今までのように逃げたりはしたくなかった。

『え、もう、、馬鹿、、、もう><また舌先三寸で私をもて遊んで////そんなんじゃ、ろくな死に方しませんよ><』

「冗談じゃないって言ったら?」

と言って、追い打ちをかけることまではできず、ただへらへらと笑って恥ずかしさをごまかした。

こちらの顔を覗き、ぼくの頭を小突く。カメラをベンチに置いた手提げかばんに収めながら彼女が言う。

『君の正直な気持ちが知りたいな。そうだ!今回のことのオフレポ書いてよ。元文芸部の君の文章力でさ。』

「元文芸部って、昨夜散々馬鹿にしたくせに(`・д´・)貴方に見せれるようなものを書ける自信ありませんよw」
気弱にぼくは苦笑した。

頷きながら、彼女が答える

『うんうん、書けるよ、君なら。だけど、あんな無機質な文章じゃ駄目よ。事実の羅列じゃなくて、君がどう感じたかが一番重要なんだから。寺山修司も言っていたでしょ、

大事なのは、
‘リンゴは何色だったか?`
という事実ではなくて
‘リンゴを何色に感じたのか?`
という君自身の感性なんだから。

そう思ったのなら、別に黒でも青でもシルバーでも何でもいいの。大切なのは、君がどう感じたかだから。』

「難しい、要求しますねぇ・・・・・まあ、出来るだけやってみます・・・(;´▽`)」

『そう、そのいき!でき上がったら、絶対見せてちょうだいね。もし、ちゃんと書けたら、今度私が撮ったフルヌードのセルフポートレイトを、プレゼントしちゃいますから><』

「そんなのよりも、現物が欲しいなぁ( ´∀`)σσ 」

『何言っているんですか/////現物を前に手も出なかった童貞君はどこに行ったのかなw』

「・・・・・・(;´∞`)」

彼女の意地の悪いアイロニーに開いた口がふさがらない。

『どうですか?書いてくれますか?』

書ける気がせず曖昧な返答でその場を濁す。

『駄作を書いて、私にまた批判されるのが怖いんだwww』

と、煮え切らないぼくの煮え切らない態度を笑顔で煽ってくる。

その悪ガキ染みた笑顔を見せる自称文学少女に一矢報いてやろうと、ぼくは彼女の目を見て答えた。

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朝もやも晴れ、晩秋の透き通った空気の中、雲の隙間から日光が差し込み、みなもは光を反射させてキラキラと輝く。
電車の時間も差し迫っていたので、ベンチを離れ、再度橋を渡り始めた。

朝帰りの彼女を駅へと送る道すがら。自惚れしちゃいそうなほど完璧な環境の中を、二人、てくてくと歩く。コツコツと彼女の靴が軽快なリズムを辺り一面に響かせる。いつも通るこの何もないふれあい橋がいつもと違って見えた。
朝日が差し込み、影になった彼女の横顔を眺めながら、駅に着くまでのあと少しの短い時間を惜しんで、互いにあることないことまくしたてるように話し合う。彼女のまねをして高幡不動、強いてはふれあい橋の素晴らしさについて難しい言葉を使って講釈を垂れた。

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そうだ!これからはここを“ドヤ橋”と呼ぼう。

きっと、これからもこうしてドヤ顔で彼女と通ることになるのだから。


*******************************

 

 そうした経緯で書いたのがこのオフレポだった。
しかし、結局オフレポを彼女に提出する機会を見計らっているうち別れてしまった。

別れた日も、その道を通って彼女を駅まで送った。


‘これでいいのだ`


よかったのだ。と駅からの帰り道、自分に言い聞かせながら歩いた。運命的な大恋愛をしたわけでもないし、悲劇と呼べるほどの失恋をしたわけでもない。
しかし、どうも男というのは自分が悲劇の主人公になったが如く思い、嘆いては自惚れする生き物らしい。
ぼくはそんな馬鹿な振る舞いは絶対しない。たかが失恋でサムライたる日本男児がそう感傷的になることあってはならない。


「酔うまい、絶対に自分に酔うまいぞ」


そう独り言のように呟きながら、“旧ドヤ橋”を歩いた。


今年のクリスマスもケンタッキーにお世話になることは無いらしい。
暗闇のなかライトアップされたふれあい橋を渡りながら、寒風に吹かれながら、実現することのなかった分刻みで作ったクリスマスプランのあれこれに思いをはせる。
家に着くまでは「このっ、このっ」と我慢してみようと試みたが、橋を渡りきりもしないうちにぼくは泣いた。


夜泣き 男が 橋渡る


恋に破れた男と言うのは、なんでこう無様なものか。

ただその時ばかりはどうしようもなかった。

せっかくのいい機会だ、泣きたいだけ泣こう。

こう言って、肯定するので精いっぱいだった。

 

 この日記を書いた本当の理由は、彼女にぼくの書いたオフレポを見てもらうためである。
もう別れているので、彼女に直接送るのが気まずく、また、彼女に向けて書くのも恥ずかしかったので、ブログを媒介として公開する形式で書き、見せる道を選んだ。
そのことに関しては彼女も事前に了解済み。これから書きあげた旨を通知する予定だ。

まぁ、どんなレスポンスが来るにせよこれから先のことは書くつもりはない。

どうせ、ハッピーエンドは期待できない。


彼女は笑う。
彼女はしゃべる。
彼女は怒る、
そしてたまに殴る。


背中合わせで寝ているぼくを置いて、夜な夜なオフ会を歩き渡る。

彼女はそんな女性だった。

そしてぼくは根っからのこういうやつ

 

これまでも、そしてこれからも二人の溝は埋まりそうもない。