家族

テクノは生きている

特別お題「今だから話せること」 ぼくらの結婚式のアルバムをめくりながら、その男は言った。 「これじゃあ細君というよりも"太君(ふとぎみ)"やね」 ぼくは苦笑するしかなく、その男の隣に座った妻は怒ったような声で「これでも40キロ台でした」と答えた。 …

ポケモンごっこ

22歳の新人と30歳のぼくの同期がポケモンのアニメの話をしていた。 「30にもなって何がポケモンだよ」と、ぼくは内心嫉妬しながらも、可愛い新人と楽しそうに話す同期の話を盗み聞く。サトシがついに引退するという話らしい。 「ポケモンとか懐かしいなぁ。…

ヤングケアラー

娘と遊びに公園に行った際、そこで見る娘と同じ背丈の幼児たち。一人で滑り台で遊んだり、親相手に2語文を話したりしている。娘よりもだいぶ賢そうだ。 街で同じ背丈の子を見るたびに、娘と比較しては彼女の知能の発達に不安を感じることが増えた。 そんな毎…

下北沢散歩

「30年前のバブル真っ只中では夢の億ションだったのよ」 と義母が見上げながら自慢げに話すそのマンションが妻の実家。ぼくは未だ上がったことはない。 婚約の挨拶を済ませても、入籍してもぼくは妻の実家には上がらせて貰えなかった。学歴とかのことが引っ…

夜ふかし赤ちゃん

0歳の娘が寝ない。 推奨入眠時刻の21時になると、毎日ちゃんと寝室に連れて行くのだが、布団に寝かせようとすると暴れ始め居間へとハイハイで逃げていく。 おんぶで寝かせようと背負って暗い室内を歩き回るも、上機嫌に歌?を歌ったりしていっこうに寝る気配…

自殺遺伝子

江戸川乱歩の短編に、自殺に怯える青年の話がある。 青年は裕福な家庭に生まれ何不自由なく育ったが、父方の家系に自殺者が多かったことが気がかりだった。そして、父と兄の自殺をもってその疑いは確信に変わる。 いつか自分も自殺してしまうのではないか、…

前進

「俺らが浪人生だったとき、元クラスメイトのFB見て回ったことがあったじゃん。 確かまさき君がデキ婚して子供ができたばかりの時期でさ、 ……そうそう確か19の夏だ。 あのとき、赤ちゃんと一緒に映る彼のpostを見て『土人だな~w』って笑ったよな。 けど、3…

帰省2021

年末年始は実家に帰った。 上司の上司や総理大臣から「帰るな」と言われ、悩んだ末の決断だった。 この機会に帰らなければ、初孫を見せる機会がさらに遅くなってしまう。 この決断に両親は特に何も言わなかった。彼らにとっても帰って来て欲しかったんだろう…

粉飾ウンコ日記

生後3か月になる娘が2~3日に一度しかウンコをしない。 最初は「そんなもんだろう」として気にもしていなかったが、定期健診で小児科医から注意を受け、下剤を処方された。どうやら便秘らしい。 ミルクしか飲んでないのになんで便秘に? と疑問に思ったが、調…

宮迫博之のYouTubeいまでも観てます

ガヤガヤした活気のある居酒屋でドンチャン唾を飛ばしながら数名で騒いだあと、サシの3次会では落ち着いたバーでしっぽりと飲んでるとき、相手のオタクがぽつぽつと話す学生時代の思い出話。 「別にイジメられていたわけではないんだけど…」 で始まる、愛さ…

お宮参り

娘のお宮参りで近所の大きな神社に行った。 「お宮参りするから君のところの親呼んで」 と妻に言われたとき「?」だった。お宮参りって何? ぼくの家庭はそういうのをしっかりやらない家庭で、教育と経験値が不足してるため、葬式や結婚式といった儀礼ごとで…

年を取るということ

30歳になりました。 もう立派なおじさんです。 職場やツイッターとかでも若者界のベテラン気取りな言動は慎み、おじさん界のニューフェイスとして、慎ましく老いて行こうと決めました。 ……しかし年を取るのはやっぱ嫌だ。もうカート・コバーンのことを"カー…

ふたりは大人になりました

義母が大病を患ってしまい、親族のぼくは週3のお見舞いを余儀なくされてしまいました。 症状は重度の希死観念、病名は鬱病です。 いつものことだと高を括る妻に対して、医者は「自尊心の低下が甚だしいので、無視せず気を遣ってあげてください。」とのこと。…

歯のことについて

歯医者に検診を受けに行った。 結果全て問題なし。 ただ「歯垢が多いので歯磨きをしっかりね」と歯磨き研修を受けた。受講者はぼくひとり。 常時閑古鳥が鳴くこの古歯科医院、ぼく以外の通院者がいるのを見たことがない。 歯科医も歳だし、歯科助手も歳だし…

ムーミンぐらんぷり

本日出社すると同僚にM-1グランプリの話を振られた。 「今朝めざましテレビで出てたね」 と応える。 めざましテレビなんて見てないけど、適当な相槌。彼が話を続ける。 M-1グランプリ、昔は大好きでDVDまで借りて繰り返し観てたけど、ここ数年は全く観ない。…

パンのみで生きる

帰り道、妻と義母の話をした。 「あの人は何で死にたがっているんだろうね」 妻の母がまた自殺未遂をしたらしい。 いつも思っていることをぼくは口にする。 「お金もたくさんあって、働く必要もないなら、気ままなニート生活。 いいじゃん、何にも病むことな…

セックスレスの話

してない。6か月ほど。 する気が起こらないのだ。 週に一度は手をつないで街歩きに出かけるし、毎日今日あったことを話しながらご飯を食べる。 寝るときは話をしながら手をつないで寝る。 そういう気が起きないけど仲良しのつもりだった。 けど、最近「さみ…

理系女子たちのすべて

中1の秋、親の離婚を期に『自立した女性になるため手に職を』と進路を理系に定めたある少女。 刻苦勉励の甲斐あって、国公立理系学部、同理系院を経て大手化学メーカーにめでたく就職。配属先は地方の工場。やりがいはあるけれど、不規則な勤務時間、男ばか…

医学部の部誌

昨夜家に帰ると、ポストに妻あての小包が入っていた。月刊マガジンみたいな重みと厚さ。通販かな?と思い送り主を見ていたら嫌な言葉がそこにはあった。ぼくより30分遅れて帰ってきた妻に小包を渡す。 「これ○○大学の○○部から届いていたよ」 「あぁ、もうそ…

ハンバート・ハンバートの日記

「むかしはメーテルそっくりでとても綺麗だった。年は取ってしまったが、僕はいまでもそう思っている。」 妻の一家と付き合って15年にもなる家庭教師による、妻の母、つまりぼくの義理母評だ。 メーテルというのは言いすぎかもしれないが、若い頃の写真を見…

楽園

5年ぶりくらいに両親の故郷である奄美諸島の小さな島に帰った。目的は去年の結婚式に台風のせいで来れなかった親戚たちに、妻といっしょに挨拶をするためだ。pokita.hatenablog.com 弟はもちろん来なかった。 電照菊の栽培で有名なその島は花の島と呼ばれて…

無職の弟

弟は今年でいくつになるだろう……。たしかぼくと5歳差だったから、23歳。 同年代は大学を卒業して働き始める頃だ。 弟、彼は引きこもりのような生活を送っている。15歳、高校1年の春にして不登校からの退学からの人生ドロップアウト。以来ずっと家に引きこも…

沖縄土地バブル

ふるさとの 山に向かひて 言ふことなし ふるさとの山は ありがたきかな 石川啄木の短歌だったと思う。 故郷というのは自然ばかりが豊かな寒村で、日々都会の雑踏に揉まれ生きる帰省者の憩いの場所でなくてはならない。 このゴールデンウィーク、地元沖縄に帰…

夜ふかし

ここ半年はセックスレスだという事実を先に書いておきます。あも!ローリグだなもでという彼女の叫びを合図に抱き合って地獄車のような形で、布団を2つつなげて敷いた六畳一間の和室をぐるぐると何周も転がる。頃合いが良くなったところで彼女が一言。あーお…

結婚式の謝辞

互いに式を挙げるつもりはありませんでした。「結婚式はやっぱりする」と決めたのが梅雨に入りかかった頃だったので、6月末くらいだったと思います。それから3ヶ月。「親への手紙とか絶対イヤだから出し物も何もない略式のリゾート婚ね」と彼女、新婦に言わ…

妻に恋した男

結婚生活、基本的に各々が好きなように過ごしてる。会話の内容も「たんたん」「あもやだ」「ころころ」「なす!」みたいなもので意味をなしてないし、家の中ですれ違えば手を取り合って踊るし、眠れないし夜は一緒に散歩していい感じの自動販売機を見つけた…

義祖母が話せば

彼女のストーリーを信じるなら、ユミ―ぼくの妻―は現総理大臣の遠戚ということになる。 その彼女、ミーちゃんことユミの祖母の生まれは兵庫県。そのミーちゃんの母親、つまりユミの曾祖母の生まれが山口県。曾祖母のご兄弟の配偶者が、あの安倍一族の本家に連…

夜歩く

昨夜、彼女が家出した。理由は 「120グラムで作るべき冷凍おにぎりを、ぼくが130グラムで作ってしまったから」?目前に控えた結婚式に対する消極的なぼくの姿勢に、日頃フラストレーションが溜まってたらしく、「たった10グラムの誤差ぐらいいいじゃんケチん…

トゥルーロマンス

土曜出勤から帰ってきた彼女の顔はやはり疲れていた。 これ、今日職場のみんなで撮ったの。どこに私がいるかわかる? もちろん、この真ん中でしょ そう。全然笑ってないよね 辞めたい、辞めたいと繰り返し彼女はそのまま寝入ってしまった。テレビには先週録…

嫉妬の話

妻には浮気癖がある。「これは病気だ」と本人は言うし、ぼくもそうなんだろうな、と最近思えてきた。 むかし、まだ妻が彼女だったとき、その浮気癖を咎めたことがあった。そしたら一言。「私の浮気はお前の浮気とは違ってお金がかからない。なんならタクシー…