生後3か月になる娘が2~3日に一度しかウンコをしない。
最初は「そんなもんだろう」として気にもしていなかったが、定期健診で小児科医から注意を受け、下剤を処方された。どうやら便秘らしい。
ミルクしか飲んでないのになんで便秘に?
と疑問に思ったが、調べてみたらよくあることなそうだ。
赤ちゃんは一日2~3回はウンコをする生き物らしく、2~3日に一度は明らかに便秘。娘の体を見てみたら、たしかに発展途上国の子供よろしくお腹だけが少し膨れている。
「毎食前にこの下剤を飲ませろ」
と医者にキツメに言われた。下剤は琥珀色をした甘いシロップで、医療用のストローを使って一回20ccで口から投薬することになっている。
飲ませてみると効果テキメンで、日に3回はウンコをするようになった。
ミルクしか飲んでないのに日に3回。
ウンコに粘り気があるのは1回目くらいのもので、その後出るのは茶色の水。張ってたお腹も凹み、それどころかシワシワな皮余り、後期高齢者みたいなお腹になってしまった。
異常。
水っぽいウンコを頻繁に出し、衰弱していくお腹。かつて日曜ドラマ「仁(JIN)」で放映されたコレラ患者のそれ近い。
これはマズイと自己判断で投薬の頻度を少なくした。その次の定期健診で、妻はこのことを小児科医に報告した。
「~~というわけで、投薬は一日一回を限度に、様子を見ながらあげています。」
それに対して小児科医は、
「お母さん、勝手にやめてはいけません。私は小児科医で子どもの専門家です。毎日3回くらいウンコする、結構じゃないですか。たとえそれが水っぽかったとしても問題ありません。言われた通り続けてください。」
とまるで教え子に対する先生のような感じで、妻を叱責したらしい。
「次はウンコした時間と投薬した時間を記したウンコ日記書いて持って来い、だってさ」
「それ毎回マジメに書くの?」
「書かない。だって日に数回も投薬する気ないもの。あのお腹見たでしょ?あんなのが正常なわけない。」
じゃあウンコ日記は書かずに持っていくの?
と聞くぼくに、妻は「嘘の記録を書くつもり」と答えた。
「だってあの医者怒ってくるもの」と。
それから妻は、ありもしない投薬記録とウンコ記録を、小児科医提出用のウンコ日記に付けることが日課となった。
「あの医者、当の親である私より神経質すぎ。なんなん?」と妻。
「ああいう態度が産後鬱とか育児鬱とか発症させるんじゃね?」と妻。
そうだね、そうだな。と打つ相槌も連日となれば手ぬるいものとなり、それが彼女の不満を買う。
「私だけの問題じゃないんだよ?」
ごめんごめんと謝る。
実家に頼れない、ただでさえ孤独な育児生活にコロナ禍での新しい生活様式ときた。話し相手は毎日20時ごろにしか帰宅しない旦那しかいない。そりゃ愚痴のひとつやふたつ言いたくなる。竹内結子さんの例だってある。とても大変なんだよな。
気づけばぼくがウンコ日記の虚偽記載担当になっていた。記載する内容は、食事時間と睡眠時間を除きすべてが嘘だ。
医者のご機嫌取りのため、ぼくはウンコ日記を粉飾している。