歯のことについて

歯医者に検診を受けに行った。

結果全て問題なし。

ただ「歯垢が多いので歯磨きをしっかりね」と歯磨き研修を受けた。受講者はぼくひとり。

常時閑古鳥が鳴くこの古歯科医院、ぼく以外の通院者がいるのを見たことがない。

歯科医も歳だし、歯科助手も歳だし、建物だって年季が入ってるし、設備も古い。ただ、そのお祖父ちゃん歯医者の腕と親切心はピカイチだった。だから虫歯もないのに毎年通ってる。

 

その日は1時間くらいおじいちゃん歯医者とマンツーマンの時間を過ごした。

 

その晩、おじいちゃん歯医者から聞いた歯の話を、たまたま上京して遊びに来てた母親に話す。

 

母がぼくの話に応える。

 

「そうそう、コーヒーに、特に赤ワインのステインが歯を茶色に染めちゃう原因らしくてね。お母さんもむかし、学生の頃に赤ワインにハマった時期があってね〜…」

 

(学生時代、赤ワインにハマった時期……)

 

男かぁ。男の影響かぁ。とぼくは思った。母と父が結婚したのは28歳のとき。きっかけはお見合いだと聞いた。つまり、これはきっと父以外の男だ。

 

母親や妻が、たまに見せるぼくの知らない女性の顔。それがとても嫌いだ。

 

母はどんな男と赤ワインを飲んでいたのだろうか、と気持ち悪いことを考えないように、おじいちゃん歯医者から聞いた"歯磨きのコツ"を熱心に語った。

 

 

ーー歯と歯茎の間を磨く際は、歯ブラシの7割くらい歯茎に当てる感じで磨きましょう。

出血なんか恐れてはいけません。むしろ、出血させて歯茎の腫れを引かせるべきです。

そうして歯茎が引き締まってくると、自然と歯周ポケットが開き