先日、上司とキャバクラに行った。
上司は異常独身男性を絵に描いたような人で、ぼくとは4年の付き合いになる。よくメダロットの話や、アベンジャーズの話をする。
彼はとてもいい人なんだけど、周囲から少しズレていて、だからこそぼくとはとても仲が良い。唯一職場でストレスなくコミニュケーションを取れる相手だ。
その他の同僚はというと、毎日天気の話をするくらいのつながりだ。それ以外に共通の話題を見つけられそうにない間柄。
働き始めてから4年、沈黙が怖くて、かと言って振れるような話題もなく、毎朝取り敢えず天気のことは勉強して話題に困ったらそれを引き出して……おかげで天気のことにはだいぶ詳しくなった。
ぼくはコミュ障なのかもしれない。
会話が下手で、なんなら苦痛にすら感じるぼくにとっては、キャバクラもその例外ではない。
連れられて行くたびに、「お金を払ってるのはこちらなのに、何で話題に受け身なんだよ」とか思ってイライラするし、初対面の女性相手にソワソワする。
今回のキャバクラもそんな感じで終わるんだろうな、と思って期待はしてなかったが、席に着いた女の子がぼくの指輪を見て、夫婦生活のことを興味津々に聞いてきた。
ぼくはそれに答えて、その流れで相手の恋愛遍歴を聞いた。男女が互いの過去の恋愛の失敗談を語り合う場、盛り上がらないわけがない。
初めてキャバクラが楽しいと思った。
帰り道、なぜ女性との会話であそこまで話題に困らなかったのか、を考えた結果、たどり着いた結論が「恋バナは天気以上に汎用性の高い話題」ということ。まあ当たり前のこと。
近年セクハラなどがうるさいため、職場ではそんな話題を振るのは憚られてるし、そもそも、そんなこと気軽に話せる人間関係を築けていない。
あくまでお金を払ってる相手だからこそ、振れる話題なんだよな。
話せる間柄の相手となら、特に相手が異性であれば、恋バナは天気に勝るキラーコンテンツだと思う。
でも、天気以上に実りがないと思うのはぼくだけか。
恋バナの話を振るとき、振られるとき、無意識のうちに「話題が尽きたし取り敢えずテッパンのこれ振っとくか」という判断が働いているように、ぼくには思えてしまう。
だれに振ってもそこそこ盛り上がる恋バナなんかよりも、この人には聞きたい話題がある。むしろ、この人から恋バナは聞きたくない。
親しい間柄ならなおさら、会話においてはいっときの盛り上がりを重視しない、そんな感覚をもっと大事にしていかなければならないとぼくは思う。
ポケットモンスター金・銀を買ってもらえなかった悔しさから、クリスタル版は事前予約して買うも、クラスでは「今どきポケモンはないよな」という風潮で対戦相手が誰もおらず、折しも両親が険悪な時期で、怒号飛び交う部屋の隅でスイクン獲得に悪戦苦闘してた日々、スイクンを見るたび思い出す。
電車の中で沢尻エリカ似の女子中学生が腐女子みたいな会話してて、「そういえば昔クラスにいたなあ、整い顔の底辺カースト」と思った。
後輩とカレーを食べに行ってたんだけど、あまりにも話題がなさすぎて「先輩カレーとかふだん食べますか?」とか聞かれた。
オチもない、なんの話にもつながらない、盛り上がらない。双方向ではないこうした話をぽつぽつと、ただ聞いてほしい、相手に話したいと思うのは甘えなのだろうか。
迷惑だ、甘えだ、というのであれば、今度は自腹でキャバクラに行って、キャバ嬢相手、思う存分迷惑な小話をし続けようと思う。