高層階

うちは5階建てのアパートの1階に住んでいる。

1階なのでエレベーターには乗ったことがない。

「上の階はどうなっているのだろう?」

 

と気になりエレベーターに乗ると、知った顔の女性が入ってきた。

元カノだった。彼女は確か渋谷住みなはずで、気づけばそこは真昼の渋谷になっていた。

夢だ。

 

エレベーターの中にはもうひとり男がいた。

途中から入ってきた男ではない。最初からエレベーターにいた男だ。

1階だというのに。変な男だ。

 

彼女は21階を押し、男は20階を押した。

そこのエレベーターは高級ホテルのように、居住者のIDカードを機器に読み取らせないと階を押せないシステムになっていた。ぼくは最上階の25階に行きたかったけど、1階の住民であるぼくはそこに行けない。彼女についていくことにした。

 

隅に立つ男、彼を見た瞬間、彼がIT社長であることがなぜかわかった。

ドアは半透明となっており、通過するフロアからチラチラと日光が差し込む。

エレベーターが上昇を続け12階を通過する。

13階から20階までは人が住めないフロアとなっているらしく、この間はドアから見える風景は真っ暗なままだった。

 

20階に到着するとドアが開き、IT社長だと思われる男がエレベーターから降りた。

ぼくと、そしてなぜか彼女もエレベータから降りる。

そこは見晴らしのいい空中庭園となっていた。(25階建ての20階なのになぜ?)

渋谷の街並みが一望できた。文字通りのセレブ物件だ。ここより高い階に住んでいる彼女は、きっともっとセレブだ。ぼくと別れてから何があったのだろう、と疑問に思っていると、

「20階だけは1フロア1住戸なの」

と彼女。私の階はここに比べてだいぶ庶民的な方。と続けた。

 

「あの頃と比べて渋谷の街並みはだいぶ変わったね」だとか、「お母さんと一緒に住んでいたけど、ここにはお母さんと一緒に引っ越したの」だとか聞きながら空中庭園を散歩し、エレベーターに戻り21階に向かった。

 

寝る前に貧乏アパートで生活する住民たちのドラマを観ていたせいだろうか。

21階、そこは狭いベニヤの通路に洗濯機や下駄、猫除けのペットボトルが並ぶ貧乏アパートだった。

「部屋に来る?」と彼女。

 

部屋に呼ぶとはそういうことだろう、と思い先にトイレに行きたいと言うと、トイレはどうも部屋には付いていないらしい。廊下の奥、非常階段の近くに共用の男女トイレがあったので、そこで用を足そうとしたが、ドアを開けると黄色い液体の溜まった大便器が一つ。近くに未使用品だと思われる白い褌が落ちていた。

気持ち悪かったので、トイレは我慢し彼女の部屋に上がる。

 

そこは1Rの畳部屋で、ゴホゴホと男の咳が響いていた。どうやら隣の部屋かららしい。壁を見てみると、それは壁ではなくカーテンで、それが唯一の隣の部屋との間仕切りだった。

ぼくは京都旅行で泊まったタコ部屋を思い出した。

 

これは行為中の音も隣の部屋に聞こえるな、と思いながらもさてこれから、というときに目が覚めた。

 

変な夢だったのでここに書く。