大学3年生の春、友人(いたんだ)とふたりで佐渡を旅行した。
目的は朱鷺でも金山でもなく「森ゆうこ議員の選挙区視察」。バカみたいだけど本当の話。
ふたりでよく変わったことをするのが好きだった。ぼく自身は変わったこと自体に興味があるわけではなく、「コイツとだったら○○だって楽しめる」と証明するのが快感だったんだと思う。
朝鮮学校訪問も楽しかったし、巨人戦だって楽しかったか。
卒業旅行では淡路島に20日ほどその人と泊まった。
ぼくが結婚し、向こうも当てつけのように婚活に精を出すようになり、最近は半年に1回ほどしか会えてない。
「老後、死を待つとき、人生を振り返るんですよ。
『ひとり孤独死に臨む今、独身を貫き通した生き方に後悔はないか』って。
そのとき、この婚活漬けの日々を思い出して自信を持つわけです。
『あーろくな異性いなかったからいいかな』って。若い期間を将来の言い訳に消費するこの悲しさ、わかる?」
この話が大好きすぎて、会うたびに聞いてる。
佐渡旅行の夜、話もそこそこにぼくは談話室から持ってきた手塚治虫全集『奇子』を読みふけってた。
「うちの爺さんのさ、新婚旅行先、佐渡だったらしいんだけどさ…」
何か大切なことを話していたんだと思う。
その晩聞いた話の続きが思い出せない。